「採用した医師が使えない」はなぜ起きる?
医師採用の失敗パターンと見抜き方

高い紹介料を払って採用した医師が、数か月で「思っていたのと違う」と感じられてしまう。医師の採用を担当する方から、こういう相談は少なくありません。書類選考も面接も通っている以上、原因はスキルではなく別のところにあるはずです。この記事では、医師採用の失敗でよく見られるパターンと、採用前にできる確認方法を整理します。
01経歴書と面接が保証するのは「できること」だけ
専門医資格、症例数、勤務してきた病院の規模。医師の経歴書には、こうした「できること」の証明が並びます。福祉医療機構の調査でも常勤医師採用の主な経路は人材紹介会社経由とされ、紹介の段階でこうした経歴面はある程度絞り込まれています。つまり、書類やスキルチェックの網に引っかからない医師はあまりいません。
問題は、その先です。指示系統に従えるか、当直やオンコールに協力的か、医局や経営層とうまくやっていけるか。こうした働き方の情報は、経歴書のどこにも書かれていません。
02「使えない」と言われる医師によくあるパターン
採用担当者やリファレンスチェックの現場で聞く話を総合すると、いくつかの型が見えてきます。
- 指示系統に従わない:技術は確かなのに、自分のやり方を譲らない。前職で開業医や部長職を経験していると、新しい職場のルールを軽く扱ってしまうことがあるようです。
- 当直・オンコールへの非協力:チームより個人の都合を優先し、負担が他の医師に偏る。
- 医局・経営層との軋轢:意思決定プロセスに納得がいかず、早々に転職活動を再開してしまう。
- 経歴と実態のズレ:症例数や専門領域を本人の申告どおりに信じていたら、実際の経験は聞いていた話よりだいぶ手薄だった。
一つひとつは珍しい話ではありません。ただ共通しているのは、スキル不足ではなく、働き方の癖でつまずいているという点です。
ヒポくんメモ資格や症例数は「できるか」の話で、指示系統との相性は「一緒にやっていけるか」の話。別の軸だから、片方だけ見ても失敗を防げないんだ。
03紹介手数料の高さが失敗のダメージを大きくする
医師1人あたりの紹介手数料は平均335.9万円(東京都病院協会調査)とされています。看護師の紹介と比べても単価が大きく、採用してすぐに辞められたり、現場に合わず実質戦力にならなかったりすると、経営への影響は他職種の比ではありません。
「使えない」医師1人を採用した場合の主な損失
- 平均335.9万円とされる紹介手数料
- 再募集にかかる時間と、その間の欠員による現場負担
- 指示系統や医局内で生じた摩擦の後始末
04紹介会社の説明だけで判断するリスク
日本医師会・四病院団体協議会の報告書(2026年3月)では、医療・介護・保育分野の求人側の56.8%が「紹介された人材がすぐに離職してしまう」ことを課題に挙げており、背景として十分なヒアリングを行わずメールでのやり取りだけでマッチングが進むケースが指摘されています。紹介会社は成約すれば手数料が発生する仕組みのため、候補者のネガティブな情報を積極的には出しにくい構造がある、というのが実情のようです。本人からの自己申告だけをもとに、前職での評判や退職の実際の経緯を判断するのは、正直なところ難しいと言わざるを得ません。
看護師採用の失敗パターンについては、看護師採用の失敗パターンとは?「採用した看護師が使えない」と感じる原因と見抜き方で取り上げています。医師とは異なる型が見えてきます。
05採用前に「働き方の癖」を知る方法
面接のやり取りだけでこれらを見抜くのは、正直なところ簡単ではありません。実際に一緒に働いた同僚や上司に話を聞くリファレンスチェックは、指示系統への向き合い方やチームでの振る舞いを、入職前に把握する数少ない手段の一つです。紹介先の会社に直接聞けば角が立ちますし、本人に無断で連絡先を探すわけにもいきません。本人の同意を得たうえで、第三者が匿名性を保ちながら聞き取る仕組みだからこそ、意味を持ちます。
面接そのものの質を上げたい場合は、医師の採用面接で何を見極めるかもあわせて参考にしてください。
06よくある質問
Q. 医師の採用に失敗したかどうかは、いつ頃わかりますか?
多くの場合、着任後1〜3か月以内に、指示系統への向き合い方やチームでの振る舞いから見えてきます。当直・オンコールへの協力姿勢や、医局・経営層との関係づくりは、実際に働き始めてからでないと判断がつきにくい部分です。
Q. 紹介会社を通していれば、こうした失敗は防げますか?
ある程度は防げますが、限界もあります。紹介会社は経歴や資格の照合はしますが、指示系統との相性や働き方の癖まで保証するものではありません。成約時に手数料が発生する仕組み上、候補者のネガティブな情報を積極的に伝えるインセンティブも働きにくいのが実情です。
Q. リファレンスチェックは医師採用にも使えますか?
使えます。一緒に働いた同僚や上司から、指示系統への向き合い方やチーム医療での振る舞いを確認することで、面接だけでは見えない部分を入職前に把握できます。


